一人っ子相続とは|相続手続きや相続人の範囲をわかりやすく解説
「自分は一人っ子だから、親の相続の際にもめることはないはず」と考える方は少なくありません。しかし、一人っ子だからといって相続人が自分一人になるとは限らないことはご存じでしょうか。また、一人っ子相続ならではの注意点も存在します。本記事では、一人っ子相続時に誤解されがちな相続人の範囲や注意点、備えておくべきことについてわかりやすく解説します。
1.一人っ子相続時には誰が相続人になる?
少子高齢化の日本において、子が1名で親の相続を迎えるケースは決して少なくありません。では、子が一人っ子の場合には親が亡くなった際の相続人はどのような範囲となるのでしょうか。本章で解説します。
1-1 一人っ子だけが相続人になるとは限らない
一人っ子だからといって、必ずしも自分一人だけが相続人になるわけではありません。相続人の範囲は民法によって定められており、配偶者は常に相続人となるほか、亡くなった方(被相続人)に子がいる場合はその子が第一順位の相続人となります。
たとえば、父親が亡くなり、母親が存命で子が自分一人(一人っ子)というケースでは、相続人は「母親」と「子」の2名です。一人っ子であっても、両親のどちらか一方が存命であれば、その親も相続人に含まれる点に注意が必要です。
また、被相続人に離婚歴があり前の配偶者との間に子がいる場合、その子も相続人となります。自分が一人っ子だと思っていても、戸籍を確認したら異母・異父兄弟がいたというケースもあります。相続手続きを進める際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取得し、相続人の範囲を正確に確定させることが不可欠です。
1-2 二次相続時にはどうなる?
両親のうち一方が亡くなった際の相続を「一次相続」、その後もう一方の親も亡くなった際の相続を「二次相続」と呼びます。二次相続の時点で、原則として相続財産はすべて子が相続することになります。
二次相続では相続税を大きく節税できる配偶者控除(配偶者の税額控除)が使えなくなるため、一次相続よりも相続税の負担が重くなりやすいという特徴があります。一人っ子の場合、一次相続・二次相続を通じて最終的にすべての財産を一人で受け継ぐことになるため、二次相続を見据えた早めの対策が重要です。
2.一人っ子相続時の4つの注意点
一人っ子が相続する場合には、相続人の範囲以外にも注意すべき点があります。そこで、本章ではあらかじめ知っておきたい相続時の注意点を4つにわけて解説します。
2-1 相続税負担が大きくなる可能性がある
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。一人っ子の場合は法定相続人の数が少なくなるため、兄弟姉妹が複数いる家庭と比べて基礎控除額が小さくなり、結果として相続税の負担が大きくなりやすい傾向があります。
さらに、財産を分け合う相手がいないため、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)なども小さくなります。将来受け取る財産の総額によっては、相続税の納税資金をあらかじめ準備しておく必要があるでしょう。
2-2 相続手続き全般の負担が大きいリスクがある
自身以外にも相続人がいれば分担できる相続手続きも、一人っ子で相続人も1名の場合はすべて一人で行わなければなりません。
相続手続きに多いのは金融機関の解約や不動産の名義変更(相続登記)などで、このような手続きには戸籍謄本の収集や解約手続きなど、細かな事務負担が発生します。仕事や育児で忙しい中で平日にしか対応できない役所や金融機関の窓口に出向く必要がある場合、心身の負担は決して小さくありません。
2-3 いらない不動産の処分に時間がかかる可能性がある
実家などの不動産を相続しても、自分がすでに別の場所に生活拠点を持っている場合、その不動産は「いらない財産」になってしまうことがあります。しかし、不動産は簡単に処分できない可能性もあります。買い手が見つからなかったり、老朽化していて売却が難しかったりするケースも珍しくありません。
不要な不動産をそのまま放置すると、固定資産税の負担が続くだけでなく、管理不全による近隣トラブルのリスクも生じやすくなります。相続土地国庫帰属制度の活用や、早めの売却活動の開始など、具体的な処分方法を事前に検討しておくことが大切です。
2-4 墓じまいなどを考える必要がある
一人っ子は、両親の墓や先祖代々の墓を引き継ぐ「祭祀承継者」となるケースが一般的です。将来、自分の子や親族が遠方に住んでいたり、そもそも承継する人がいなかったりする場合、お墓の管理が難しくなることがあります。
その場合の選択肢として、墓じまいをして永代供養や樹木葬などに切り替える方法もあります。墓じまいには自治体への届出や既存の墓地の撤去費用など、一定の手間と費用がかかるため、早めに情報収集をしておくことが大切です。
3. 一人っ子相続に備えておくべき3つのこと
今後一人っ子の方々が迎える相続は増加すると予想されています。相続時に大きな負担に翻弄されないためにも、できる限り早い段階から準備を進めておくことがおすすめです。そこで、本章では一人っ子相続に備えておくべき3つのことをわかりやすく紹介します。
3-1 親子間で財産に関する情報を共有する
一人っ子相続をスムーズに進めるためには、親が元気なうちから財産の全体像を把握しておくことが重要です。預貯金口座や有価証券、不動産、生命保険、負債の有無など、財産に関する情報を親子で共有しておくことで、相続発生後の財産調査にかかる時間や手間を大幅に減らすことができます。
エンディングノートなどを活用し、財産目録や各種契約情報、専門家への相談履歴などを整理しておくのもおすすめです。
3-2 任意後見など認知症対策を行っておく
親が認知症などにより判断能力を失ってしまうと、生前の段階から預金の引き出しや不動産の売却、遺言書の作成などができなくなる可能性があります。こうした事態に備えて、親が元気なうちに司法書士などの専門家へ相談し任意後見制度や家族信託を活用しておくことが有効です。
任意後見制度を利用すれば、あらかじめ選んだ後見人(多くの場合、一人っ子である自分)が、判断能力低下後の財産管理などを担うことができます。早めに制度の利用を検討し、公正証書による契約を締結しておくとよいでしょう。
3-3 相続税をシミュレーションしておく
一人っ子相続では相続税の負担が大きくなりやすいため、事前にどの程度の相続税がかかるのか試算しておくことが大切です。財産の内容や評価額をもとにシミュレーションを行うことで、納税資金の準備や、生前贈与・生命保険の活用といった節税対策を計画的に進められます。早めに対策を講じることで、二次相続の負担も減らせるメリットがあります。
4.一人っ子相続に関するよくある質問
一人っ子相続は誰もが経験するものではないため、疑問を抱えてもどこに相談をすればいいか悩まれている方も多いでしょう。そこで、本章では一人っ子相続に関するよくある質問を紹介し、わかりやすく回答します。
4-1 法定相続人が1名なら遺産分割協議は不要ですか?
不要です。遺産分割協議は、複数の相続人がいる場合に、誰がどの財産をどのように取得するかを話し合うための手続きです。法定相続人が自分一人だけであれば、話し合う相手がいないため、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
4-2 一人っ子で実家を相続しますがどうすればいいですか?
まずは実家に住む可能性を検討しましょう。住まない可能性がある場合は売却するのか、賃貸に出すのかを検討しましょう。住み続けたり賃貸に出す場合は名義変更(相続登記)を行い、売却する場合は不動産会社に査定を依頼して市場価値を確認します。
相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく期限内に申請を行わないと過料の対象となる可能性があるため、早めに手続きを進めることが大切です。判断に迷う場合は、不動産会社や司法書士に相談することをおすすめします。
4-3 一人っ子相続のメリットを教えてください
一人っ子相続の最大のメリットは、遺産分割をめぐる争いが起こりにくい点です。相続人が自分一人だけであれば、財産の分け方について他の相続人と意見を調整する必要がなく、精神的な負担を抑えられます。また、遺産分割協議が不要なため、手続きを比較的スムーズに進められる点もメリットといえるでしょう。
5.まとめ
一人っ子相続は、遺産分割協議が不要になるなど手続き面でのメリットがある一方で、相続税の負担が大きくなりやすい、手続きをすべて一人で行うなどの課題が生じやすくなります。
こうしたリスクに備えるためには、親が元気なうちから財産情報を共有し、認知症対策や相続税のシミュレーションを行っておくことが重要です。町田市を拠点とする「まねきや不動産」は司法書士事務所を併設しており、相続のお悩み全般に対応しています。まずはお気軽にご相談ください。